鬼来迎
横芝光町に古くから伝わる因果応報、勧善懲悪を説く全国で唯一の仏教劇です。地獄の責め苦に遭う者を菩薩が救うという内容で、鬼舞いとも呼ばれています。国の重要無形民俗文化財に指定されています。
鬼来迎の歴史
蝉時雨の降り注ぐ8月16日、千葉県横芝光町にある広済寺では鬼来迎(きらいごう)という古典芸能が行われます。
広済寺があるのは虫生(むしょう)という珍しい名前の小さな集落です。仏教の「因果応報」や「勧善懲悪」といった教えを、民衆にも分かりやすく説くために作られたという鬼来迎。鎌倉時代に成立し、およそ800年もの間、地域の人々が脈々と受け継いできました。
鬼来迎は昭和51年に法制定された国指定重要無形民俗文化財の、第一回のうちの一つに選ばれ、平成25年には映画化もされました。映画は文化庁映画賞の文化記録映画優秀賞を受賞し、その知名度を大きくしました。
鬼来迎の構成は、地獄での場面を描いた、第一段「大序」・第五段「賽の河原」・第六段「釜入れ」・第七弾「死出の山」の四段と、広済寺建立の縁起を描いた第二段「和尚道行」・第三段「墓参」・第四段「和尚物語」の三段の、合計七段からなります。二~四段の広済寺建立縁起は、後世に作り足されたものと言われています。現在では第二段「和尚道行」と第三段「墓参」は鬼来迎当日には行われませんが、図書館などで映像資料を見ることが可能です。
上演の舞台は広済寺の境内にあります。緑の枝葉に囲まれて設置された舞台の上には、「鬼来迎」と書かれた昔ながらの大きな幕。そして簡易なセットのみ。
その上で演者たちは舞い、声を上げ、地獄の恐ろしさと仏による救いを表現していきます。
また、鬼来迎では、登場する鬼婆による「疳の虫封じ」という行事もあります。鬼婆に赤ちゃんを抱っこしてもらうとその子の疳の虫が治ま利健康に育つと言われており、毎年、参加した赤ちゃんのかわいい泣き声が舞台に響いて、会場を和ませています。
鬼来迎の見どころ
鬼来迎の演目は、「大序」「賽の河原」「釜入れ」「死出の山」という四段、地獄での場面がメインです。地獄の鬼に責め苛まれ苦しむ亡者の姿と、そんな亡者たちが菩薩に救われ、成仏していく様子が描かれています。
演じるのは、すべて地元の人々です。鬼や菩薩、閻魔大王などは面をかぶっていますが亡者は面をつけていません。白い衣を着て、地獄を右往左往する亡者の様子が物悲しく、胸を打ちます。
特に注目なのは、「賽の河原」です。子供の亡者が賽の河原で、「一重積んでは父のため、二重積んでは母のため…」と石を積んでいます。そこへ二匹の鬼が登場します。逃げ惑う子ども達。親より先に亡くなった親不孝を責められ鬼に折檻されます。
そんな子ども達を救うために現れるのが、黒い衣をまとった地蔵菩薩です。鬼を追いやり子ども達を助けてくれます。そして、南無阿弥陀仏の声が響く中、地蔵菩薩に導かれ子ども達は成仏していくのです。この場面では、思わず涙ぐんでしまう人もいるほどだそうです。
鬼来迎で使用される楽器は、鐃鉢(にょうばち)と呼ばれるシンバルのようなものだけ。ほかは歌と台詞、そして床を打つ音だけで作られた非常にシンプルな舞台です。
舞台も衣装も面も華美な物など一つもなく、それだからこそ真摯に見る人の心に響いてくるのかもしれません。
鬼来迎という民俗芸能が、面や衣装、動作などを含め古い時代の型を維持できているのには、目まぐるしく変貌していく都市部とは離れた、静かな農村部であることも要因の一つでしょう。先祖から受け継いできた伝統を絶やさずまた次世代に繋げていこう、という地域の人々の熱意が感じられます。
また、鬼婆に赤ちゃんを抱っこしてもらう行事「疳の虫封じ」も注目です。鬼婆とは、鬼たちの母ともいわれる奪衣婆(だつえば)だそう。赤ちゃんを抱っこして、「おー!おー!」と恐ろし気な声を上げます。抱っこしてもらった赤ちゃんは、疳の虫が治まり健やかに成長すると言われています。
鬼来迎のフィナーレとして行われていましたが、猛暑となる近年、赤ちゃんの体調を考慮し演目の前に行われることが多いようです。
鬼来迎の注意点
毎年鬼来迎の始まる時間は、午後3時くらいです。JR総武本線横芝駅から会場の広済寺までは約4㎞、歩いて一時間ほどかかります。真夏の炎天下を歩く場合は、しっかりと暑さ対策をしてください。タクシーの利用がスムーズです。
近隣にスーパーやコンビニエンスストアなどがないため、飲食物などは持参するようにし、ゴミも持ち帰るようにしましょう。
車で来る場合は、横芝ICより約3km、カーナビゲーションの使用をおすすめします。
また、会場付近の駐車場は収容台数よりも多く詰めて駐車する場合が多いので、車が出しにくいというケースが見られます。早めに帰るスケジュールの場合は誘導員にその事を伝えるか、少しゆっくり目に会場に着くようにすると良いでしょう。
祭り有名番付
※祭りびと制作委員会による独自評価。対象となる祭りがどのくらい知名度があるか全国調査により格付け。
祭り要素
祭り評価
※祭りびと制作委員会による独自評価。各項目毎★5つが最高評価。☆は詳細が不明のため評価なし。
祭り日程 2018
おおむね午後3時ころ(施餓鬼供養終了後)から1時間強
祭りを見る&祭りに参加する
観覧料金 | 無料 | 参加料金 | 無料(一部有料あり) |
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観覧予約 | 必要なし | 参加予約 | 当日予約可 |
来場者層
アクセス
住所 | 千葉県山武郡横芝光町虫生483 広済寺 |
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交通アクセス | JR総武本線「横芝駅」から循環バスひかり号約12分「虫生入口」下車 銚子連絡道路「横芝光IC」から車約5分 |
駐車場
駐車場 | 無料 30台 |
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祭り問合せ
主催 | 鬼来迎保存会 |
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公式URL | http://www.town.yokoshibahikari.chiba.jp/syoukai/kankou2/01_01.html |